時代のニーズにこたえる3機種がマランツから発表されました。オーディオ機器は比較すると、それぞれの特色・個性・性能がよくわかります。機器の選択では、バランスのよさを重視したほうがよいです。
2019 東京インターナショナルオーディオショウが2019年11月22〜24日にかけて東京国際フォーラムで開催されました。



マランツ・ブース

HDMI 搭載 Hi-Fi アンプ NR1200:音も画もたのしむ

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新製品「HDMI 搭載 Hi-Fi アンプ NR1200」の紹介・実演がありました。使用機材は以下のとおりでした。

  • プレーヤー:Marantz SA-10、その他
  • プリメインアンプ:Marantz HDMI 搭載 Hi-Fi アンプ NR1200
  • スピーカー:B&W 705 S2、B&W 702 S2
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Marantz NR1200 は時代のニーズにこたえる新型アンプです。このようなアンプがもとめられていました。音楽も映画もテレビ番組も YouTube も、すべてを高音質でたのしみたい人のための Hi-Fi アンプです。オーディオ&ビジュアルにとりくむ人につよくおすすめします。

「マランツのバッジをつける以上、Hi-Fi サウンドを保証します」というマランツ・プレゼンターの自信にみちた言葉どおり、比較的低価格の商品であるにもかかわらずクリアーな高音質を実現しています。ハイレゾ(Hi-Res)にももちろん対応しています。音場のひろがりもみごとです。

本機は、いわゆるピュアオーディオのプリメインアンプ(ステレオ2チャンネル)に、テレビにも接続できる HDMI を搭載したところに最大の特色があります。

ほとんどの人が、テレビとブルーレイレコーダーをすでにもっているとおもいます。しかしおおくの場合、テレビとブルーレイレコーダーを直接して、テレビのスピーカーで音をきいているのではないでしょうか。

そこでテレビとブルーレイレコーダーのあいだに本機 Marantz NR1200 を接続してください。そして Marantz NR1200 に2本のスピーカーを接続してください。



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こうすれば、テレビの音も、ブルーレイレコーダーなどで再生する CD・DVD・ブルーレイの音も高音質でたのしめます。それだけでなく、音楽ストリーミングもインターネットラジオも FM/AM ラジオも高音質でたのしめます。あるいはスマホやパソコンと接続してそれらの音源も高音質できけます。YouTube も高音質で視聴できます。ブルーレイレコーダーなどがない場合でも、Marantz NR1200 にテレビから音をおくって高音質でたのしめます。

イベント当日の実演では、Marantz NR1200 を接続した場合と、接続せずにテレビのスピーカーをつかった場合とを比較試聴しました。テレビ番組・映像ソフト・YouTube・ストリーミング・CD など、さまざまなソースについて実験したところ、世界がもうちがいます。音質が向上したというレベルではありません。Marantz NR1200 を接続した音をきいたあとでテレビのスピーカー音をきくと、「なにこれ」、ひどい音です。テレビの音はこんなにわるかったのか。テレビの音にはもうもどれません。テレビは、いまや 4K・8K の時代ですが、商品価格をおさえるためにスピーカーにはよい部品をつかっていないことがわかります。

これまでのオーディオ機器は、高音質を純粋に追求するピュアオーディオと、映像もたのしむオーディオビジュアル(AV)に2分されていました。アンプも、ピュアオーディオ用の Hi-Fi ステレオアンプ(2チャンネル)とオーディオビジュアル用のマルチチャンネル AV アンプとにわかれていました。

同価格帯の Hi-Fi アンプと AV アンプ をくらべた場合は、より機能がすくなく、ノイズ対策も万全な、音づくりに特化した Hi-Fi アンプが AV アンプ よりも高音質なのはあきらかです。したがってこれまでは、音楽だけを純粋にたのしむのであれば Hi-Fi アンプを選択することになり、テレビや映像ソフトを視聴するのであれば、従来の Hi-Fi アンプでは HDMI 接続ができなかったので、テレビのスピーカーの音で我慢するか、AV アンプを別途かうという選択になっていました。

しかし Marantz NR1200 が発売されたのでそのような選択肢はなくなりました。ピュアオーディオとオーディオビジュアルの区別がとりはらわれ、音楽鑑賞も映画鑑賞もこの1台でまにあいます。あらゆるソースに対応できます。テレビでは音楽番組が多数 放送されています。YouTube には、ライブなど、おもしろいソースが無尽蔵に存在します。あるいはミュージカルやオペラやバレエがすきな人もいるでしょう。

接続も簡単です。HDMIケーブル、ブルートゥースなどがつかえます。Apple TV もつかえます。マルチチャンネルの AV アンプでは何本ものスピーカーを用意して各所に設置したり、一般のユーザーにとっては接続がむずかしかったですが、Marantz NR1200 でしたら接続はあっという間です。ヘッドホン端子もあり、ブルートゥース・ヘッドホンにも対応しているので、深夜など、音がだせない環境でも音楽や映画が高音質でたのしめます。さらにサブウーファー出力もついているので、本格的なオーディオシステムに将来的に拡充することも可能です。

マルチチャンネルによるサラウンド環境はもとめず、スピーカーが2本あればよいというユーザーにとっては毎日つかえる最適な Hi-Fi アンプといえるでしょう。あなたのリスニングルームがリビングが別次元の世界にかわること、まちがいありません。音楽や映像のあたらしいたのしみかたがひろがります。音楽や映像の視聴スタイル、さらにライフスタイルが多様化している現今、多様化にあわせて機器をふやしていたら大変なことになります。機器をふやす必要はありません。これからの Hi-Fi アンプの形がここにあります。Marantz NR1200 は、あたらしいライフスタイルをきりひらくきっかけとなる歴史的な商品といってもよいでしょう。

わたしの友人に、大のクラシック音楽ファンではありますがオーディオをバカにしている人がいました。彼は、ライブによくいきましたが、テレビの音楽番組もよくみていました。先日かたっていました。
「バッハの『マタイ受難曲』をはじめてみて感動したよ。こういう曲だったのかということがよくわかった」
彼は、オーディオシステムはもっていましたがテレビには接続できませんでした。テレビの音楽番組はテレビの音できいていました。

もしも彼が、Marantz  NR1200 をつかってバッハをきいたなら、オーディオをみなおしたにちがいありません。バッハがさらにふかく理解できたにちがいありません。残念ながら彼は先日なくなりました。
 
Marantz  NR1200 はもっとはやく発売されるべきでした。どうしてこんなに発売がおくれたのか。とてもおおくの人々が本機を必要としています。必要なものはおのずと普及します。ライブが本物でオーディオは偽物だとおもっていた “音楽ファン” にも変化があらわれます。オーディオファンがふえます。時代はかわります。 


仕様
  • 定格出力:75W+75W(8Ω)、100W+100W(6Ω)
  • HDMI 端子:入力×5、出力×1
  • 音声入力:ライン×3、フォノ(MM)×1
  • デジタル入力:同軸/光デジタル各1、USB(フロント)×1、有線/無線LAN、Bluetooth
  • 音声出力:2.2ch×1、ゾーンプリアウト×1
  • ヘッドホン出力:標準ジャック×1
  • チューナー:FM/76.0-95.0 MHz、AM/ 522-1629 kHz
  • 消費電力:210W
  • 寸法/重量:440(W)×105(H)×378(D)㎜(アンテナを寝かせた場合)、440(W)×175(H)×378(D)㎜(アンテナを立たせた場合)
  • 重量:7.9㎏
  • 仕上げ:シルバーゴールドのみ


まとめ
  • 同価格帯の AV アンプ(マルチチャンネル、テレビと接続できる)と Hi-Fi アンプ(2チャンネル・プリメインアンプ)とをくらべると Hi-Fi アンプのほうが高音質です。
  • HDMI を搭載した Marantz NR1200 はテレビとも接続できる新型 Hi-Fi アンプです。
  • さまざまな接続ができ、音も画も、あらゆるソースをたのしめます。
  • ピュアオーディオとオーディオビジュアルの境界がとりはらわれました。
  • リスニングルールやリビングルームがかわります。
  • あらたなライフスタイルが実現します。





Marantz M-CR612:コンパクト・オーディオ

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マランツ・プレゼンターが、「音楽を愛する人のための、いちばん小さなマランツシステム」という、オールインワンの多機能小型ネットワーク CD レシバー Marantz M-CR612 の紹介・実演がありました。使用機材は以下のとおりでした。
 
  • プレーヤー&アンプ:Marantz M-CR612
  • スピーカー:B&W 607、DALI OBERON1
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Marantz M-CR612 とスピーカー(2本)をつなぐだけで本格的な Hi-Fi オーディオがすぐにたのしめます。こんな簡単な話はありません。


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Marantz M-CR612 には、CD プレーヤーも、DAC(デジタル・アナログ変換器)も、アンプもすべてはいっているので、とくに、すでに CD を多数もっている人にとってはとても便利な機器です。

そのほかに、ブルートゥースも、音楽ストリーミングも、FM/AM ラジオも、インターネットラジオも、音楽をたのしむための機能が満載です。高音質なハイレゾ音源にももちろん対応しています。

クリアで切れのよいサウンドをきかせ、にじみのない音像定位も実現します。低音もしっかりならし、なんといっても音のバランスがよいので長時間きいていてもつかれません。

イベント当日のマランツ・プレゼンターからは、あらたに搭載された「パラレルBTLドライブ」についてくわしい説明・実演がありました。Marantz M-CR612 は、スピーカー出力を2組、合計4チャンネルを搭載している本格的なオーディオ機器であり、より高音質をもたらすバイアンプ接続もでますが、それに対応していない通常のスピーカーに対しては、シングルワイヤ接続でも4組のアンプすべてをもちいてスピーカーを駆動することができます。「パラレルBTLドライブ」を実験してみたところ、量感としまりのある中低音がききとれました。

デスクトップ・オーディオなど、比較的せまいスペースで音楽をたのしみたい人、あるいはこれからオーディオをはじめる人のための入門機として、これ以上 最適な機器はないのではないでしょうか。

スピーカーについては、B&W 607 と DALI OBERON1 とをききくらべました。どちらも D&M ホールディングスがとりあつかうスピーカーですが両者のタイプはおおきくことなります。そもそも設計思想がちがいます。

B&W はモニタースピーカーであり、「何もたさない、何もひかない」「過ぎたるは及ばざるがごとし」などとうたっているように、原音忠実、正確な音、こまかい音、ノンカラーリングな音などを特徴とし、その反対に DALI は雰囲気重視であり、音楽そのものを純粋にたのしめるような、リビングルームで家族みんなで音楽をたのしめるような音づくりをしています。

B&W 607 の硬質な音は無味乾燥で、ヴァイオリンの高音部が金属音になったりします。よい音源は問題ないのですが、わるい録音はわるいままに、演奏者のミスはそのまま再生し、神経質な感じもなんだかして、たのしむというよりも仕事用といった感じです。

それに対して DALI OBERON1 は、あかるくたのしくはずむような音、バランスがよく響きもよい、つやもある音であり、ソフトの良し悪しに左右されずに音楽そのものをたのしむことができます。DALI OBERON1 は大ヒット・スピーカー DALI ZENSOR1 の後継機であり、さらなる高音質が実現しています。コストパフォーマンスに非常にすぐれたスピーカーであり、日常的にならすスピーカーとして、あるいは入門機として最適です。

録音状態やオーディオ機器の性能をチェックするためには B&W がいいかもしれませんが、音楽そのものを普通の人が日常的にたのしむのでしたら DALI がいいです。

オーディオ機器をかうときには、ブランド名(有名ブランドかどうか)で判断せずに、その設計思想・特徴・個性などをよく吟味してからかったほうがよいでしょう。





Marantz ネットワーク搭載 Hi-Fi アンプ PM7000N:あたらしいプリメインアンプ

ネットワーク搭載 Hi-Fi アンプ PM7000N の紹介・実演がありました。使用機器はつぎのとおりでした。

  • ネットワーク搭載 Hi-Fi アンプ:Marantz PM7000N
  • スピーカー:B&W 707S2、B&W 705S2


PM7000N


Marantz PM7000N は、ネットワークとストリーミング再生機能をもった、DAC 内蔵 Hi-Fi プリメインアンプです。スマホやパソコンや USB メモリーなどに保存した音源を再生したり、急速に普及しつつある音楽ストリーミング再生をしたりするために最適であり、プレーヤーを追加しなくても高音質ファイルが再生できるところにおおきな特色があります。ただし CD プレーヤーをすでにもっているのでしたら PM7000N に接続して CD も高音質でたのしむことができます。

操作は、スマホかタブレットにインストールしたアプリをつかいます。

そもそもプリメインアンプですから、ピュアオーディオとしての高音質をもっており、そのクオリティをたもちながらさまざまな音源をたのしめ、高解像、クリアでしまった音質、十分な低音も実現します。

音楽ストリーミング再生もしたところ、AMAZON MUSIC HD が十分な高音質で再生されただけでなく、従来の圧縮音源もかなり高音質で再生され、音楽が十分にたのしめました。高音質の音源は高音質で再生できてあたりまえですが、圧縮音源やあまりよくない音源やふるい録音をいかにうまく再生できるかはオーディオ機器にとっての重要なポイントです。むしろそこに、オーディオ機器の真価がとわれます。演奏はいいが録音はちょっとといって敬遠していた楽曲でも、本機をつかえばあらためてききなおせます。

デジタル音源が全盛になってきた現在、あらゆるデジタル音源に対応した DAC 内蔵プリメインアンプが必要です。とくに、さらに拡大するであろうストリーミングサービスに対応しなければならず、従来のプリメインアンプにかわって、 PM7000N のような先進的なアプローチがアンプの今後の主流になるのではないでしょうか。

「CDプレーヤー + プリメインアンプ + スピーカー」というこれまでのくみあわせとはちがうくみあわせで音楽をたのしむために、あるいはふるいプリメインアンプからのかいかえ、入門機からのグレードアップに PM7000N がおすすめできます。






以上みてきたように、マランツから、NR1200、M-CR612、PM7000N が発売されました。テレビ・ブルーレイレコーダーとつなぐなら NR1200、CD 再生をふくむオールインワンのコンパクトオーディオなら M-CR612、あらゆるデジタル音源を再生できるプリメインアンプなら PM7000N という選択になるのではないでしょうか。目的と予算に応じて選択できます。選択肢がふえたのはよいことです。

これら3機種は共通して、音楽ストリーミングサービスに対応しています。音楽ストリーミングサービスの特徴は、その簡便さとコストパフォーマンスのよさにあります。

とくに、2019年9月17日にサービスがはじまった Amazon Music HD が強調されていました。今回 実演されたマランツのモデルは Amazon Music HD にどれも対応しています。このサービスは、従来の圧縮音源ではなく、CD 以上の高音質(最低でも CD 音質)であり、試聴可能なロスレス・ハイレゾ音源の楽曲数は膨大で、まったくおどろきます。非常におおくの有名アーティストや著名レーベル・名盤・邦楽が高音質で再生できます。

上記の機器をつかえば、PC オーディオのようなむずかしい設定がいりません。簡単です。現在のところ、最良の音できくには、これらのオーディオ機器をつかうのがもっと手っ取りばやいです。

また Amazon 以外のストリーミングサービスも今後 高音質化していくでしょう。ストリーミングの時代になりました。時代の変化をおもいしらされるイベントでした。

Amazon Music HD
※ サービスの利用には登録・料金が別途必要です。





オーディオクエスト・ハイエンド・スピーカーケーブル比較試聴

マランツ・ブースでは、オーディオクエストのスピーカーケーブルの比較試聴会もおこなわれました。

  • スピーカーケーブル:audioquest ThunderBird、Firebird、Dragon など
  • スピーカー:B&W 800D3

比較的低価格のスピーカーケーブルから高価格のものまでを順次きいていきました。最高級品は、2.5メートルで約700万円という通常ではかんがえられない超弩級ケーブルです。

スピーカーケーブルがよくなるにつれて音の解像度・純度があきらかにたかまります。こまかい音まできこえてきます。しかし一方で、シャープネスがたかまり、音がほそくなり、音の艶やなめらかさがうしなわれます。神経質な感じになります。

オーディオクエストの設計方針についてプレゼンターから説明がありました。
「スピーカーケーブルで音がかわるということはよくしられていることですが、スピーカーケーブルの役割は音をかえることではなく、できるだけ音をかえないこと、機器の持ち味をそのままスピーカーにつたえ、音源を忠実に再現することです。よけいなことをしないのがよいスピーカーケーブルです」
今回の実演は、このことをまさにしめすものでした。

それではスピーカーケーブルは高価なものほどよいのでしょうか? スピーカーケーブルにどこまでお金をつかうか、予算配分はなやましい問題です。現実的には、スピーカーケーブルにはあまりお金をかけられず、スピーカーケーブルこそ、コストパフォーマンスのよいものを選択することになります。

通常のスピーカーケーブルでは音がかわります。シャープネス、響き、艶、なめらかさ、音質劣化など、何かがくわわります。するとスピーカーケーブルに何をもとめるのかが大事になってきます。録音(音源)やオーディオ機器のチェックをするのか、音楽そのものをたのしむのか、あらかじめはっきりさせておかなければなりません。

録音や機器のチェックをするのであればよけいなカラーリングはないほうがよいですが、音楽をたのしむのであれば、スピーカーケーブルによってカラーリングがおこってもかまわないでしょう。あなたなりの音づくりをすればよいわけです。

そもそも録音現場でつかわれるマイクは音楽のすべてをひろえているのではなく、響きや艶・その場の空気感などもふくめてすべてを記録しているわけではありません。そこでマイクではひろえなかった情報をオーディオ機器でおぎなって再生したほうが音楽をよりたのしめます。たとえば管理とメンテナンスが大変な真空管アンプがいまでも人気なのは、録音からもれおちた響きや艶をくわえて、いきいきと音楽を再現できるからです。

スピーカーケーブルにかぎらずオーディオ機器は、高解像・高純度をもとめすぎると録音や機器の粗もめだってきます。たとえば映像でも、高解像になりすぎると、アナウンサーのほくろや厚化粧がみえてしまい、こまかいところまでみえすぎてがっかりすることがあります。何事も、しりすぎて後悔した経験は誰にでもあるものです。これと似ていて、きこえすぎると耳ざわりになることがあります。すぐれた録音は問題ないのですが、あまりよくない録音の場合は、高解像度をもとめすぎるとわるいままにきこえてしまいます。純度をたかめすぎると神経質になり、ささいなことでも気になります。潔癖になりすぎると何をやっているのかわからなくなります。

あるいはヤマハの楽器開発技術者がつぎのようなことをかつてかたっていました。
「よい楽器をつくろうとおもっていますが、一流の演奏家は、どんな楽器をつかっても、あまりよくない楽器でもいい演奏をしてしまいます。そこで楽器の開発・製造にあたり、楽器の試奏・チェックは、一流の演奏家だけでなく、二流・三流の人にもやってもらっています。むしろ、あまりうまくない人でもうまく演奏できる楽器がすぐれています」

これと似ていてオーディオも、あまりよくない録音、ふるい録音などをうまく再生できる機器やシステムのほうに存在意義があります。わるい録音をわるいままで再生するのではなく、うつくしい音楽にして再生できたほうがよいです。積極的に音づくりをおこない、音楽そのものをたのしむことが肝要です。

あるいはつぎのような例もあります。最新鋭のデジタルカメラで高解像の写真をとっている人が、あるとき、印象派の絵画をみて「なんだこれ?」といいました。高解像の写真とくらべると印象派の絵画はきわめて低解像であり、こまかいところまできちんとえがかれていません。しかし印象派の絵画はすぐれた美術作品であり、それをみて感動する美術ファンはたくさんいます。同様なことは、パステル画や水墨画などでもいえます。

こういうと写実絵画があるではないかとおもう人がいるかもしれませんが、実は、写実絵画も写真ではなく、取捨選択や強調が画家によっておこなわれている芸術です。

これらと似ていて音楽も、解像度をただたかめればよい、純度をただたかめればよいということではなく、こまかいところまですべてをえがきだす必要はかならずしもありません。それよりも、音楽をきいて感動したり、いやされたり、作曲家からのメッセージをうけとったりすることのほうが大切です。

音楽も芸術です。工学の一分野ではありません。芸術にふれてこそ人生はゆたかになります。高解像や純度をただおいもとめるのではなく、高額機器にとらわれるのではなく、音色や響きや艶などをオーディオからうまくひきだして音楽そのものをたのしんでください。

今回の実演では、スピーカーは、これも超弩級の B&W 800D3 をつかいました。フロアスタンディング型の大型スピーカーであり、大音量・強音圧の音を前面におしだします。大迫力です。前から3列目の席できいていたところ、強力な音圧が体につたわってきて圧倒されました。

このようなスピーカーは、200〜300人 はいるホールのようなところでつかうと威力を発揮できるでしょう。せまくて天井がひくい部屋では音圧を感じすぎて、音楽そのものはたのしめません。だいたい、低音がですぎてソロをつぶしています。だれが主役なのかわかりません。音量と音場と部屋の大きさとの間には相関関係があり、今回のイベント会場のような会議室に大型スピーカーをいれて大音量で演奏しても音場がひろがらず、音楽を適切に表現できません。ちいさなスピーカーよりもおおきなスピーカーのほうがすぐれているとかんがえるのはあきらかな誤解です。










ロッキーインターナショナル・ブース
- 一日中きいていられる -


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ワーフェデールのスピーカー LINTON Heritage をオーディオ評論家の傅信幸さんが解説・実演しました。

  • CD プレーヤー:TAD
  • アンプ:TAD
  • スピーカー:Wharfedale LINTON Heritage
部屋いっぱいに音楽がひろがります。ここちよい空間にひたれます。さきほどの B&W とはあきらかにちがう世界です。圧力から解放されてほっとします。音質はやわらかく、やさしく、まろやかで、癖がなく、これでしたら、一日中 音楽をきいていてもつかれません。リラックスできます。

ワーフェデール・スピーカーの音質はタンノイのスピーカーのそれによく似ています。

ロッキーインターナショナルによると、ワーフェデールは、1932年創業のイギリスの伝統あるブランドであり、現在は、中国資本のもとで中国工場で製造がおこなわれています。そのためイギリス製のタンノイにくらべると価格がかなりおさえられ、常識をこえる高品質・低価格を実現しています。中国製といっても品質管理はできているので問題はなく、とてもお買い得です。

音像定位も音場のひろがりもすばらしく、とくに、スピーカーの後方に音像がひろがります。これはイギリスのスピーカーの特徴であり、JBL など、アメリカのスピーカーがスピーカーの前方に音をおしだしてくるのとはことなります。

ワーフェデールは、自己主張するスピーカーではありません。音楽だけがうかびあがってスピーカーの存在を感じさせません。スピーカーはきえてしまいます。

外観はレトロですが部品は最新のものをつかっているので、音質はまろやかといっても適度に高解像であり、こまかい音まできこえます。レトロと現代が調和した、古典と Hi-Fi が両立したスピーカーといってよいでしょう。

音楽そのものをゆったりとたのしみたい人におすすめします。

なお LINTON Heritage がおおきすぎる、高価すぎると感じる場合は、下記の小型モデルもあります。

DENTON はワーフェデールの自信作(80周年あるいは85周年記念モデル)、DIAMOND 10.1 は世界的ヒット商品です。

DENTON


DIAMOND 10.1










デノン・ブース
- 家族や友人と一緒にたのしむ -

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デンマークから来日したダリ・スタッフが自社スピーカーについて解説・実演しました。

  • CD/SACD プレーヤー:DENON DCD-SX1 LIMITED
  • プリメインアンプ:DENON PMA-SX1 LIMITED
  • スピーカー:DALI EPICON2、DALI EPICON6

DALI EPICON2
※ スピーカーの価格の記載は1本のものとペアのものとがありますので注意してください。


「ダリのスピーカーは、リビングルームで家族みんなで音楽や映画をたのしめるスピーカーです。リスニングエリアがとてもひろいという特徴をもち、普通のスピーカーは内振りにかたむけて設置しますが、ダリのスピーカーはその必要はありません。壁と並行にまっすぐ配置すればよいです」

ダリのスタッフがいうように、このスピーカーは、音を検査するためのモニタースピーカーではなく、普通の人たちが音楽や映画を普通にたのしむことを第一にして設計されています。

たとえばオーディオには、音楽が適切にきこえるリスニングスポット(スイートスポット)がありますが、ダリの場合は、「リスニングエリア」といい、広拡散特性をもつように設計されているため、音楽が適切にきこえる領域が他社製のスピーカーにくらべてひろいです。普通のスピーカーよりもリスニングエリアが広範囲になります。

イベント会場でもほかのブースでは、センターできくのとセンターからはずれた所できくのとでは、センターできいたほうが音がよいですが、ここでは、リスニングエリアがたしかにひろく、すこしぐらいセンターからはずれても十分に音楽がたのしめます。家族や友人など、複数の人々で音楽をきく場合、この点はかなり重要です。

いいかえると、スピーカーの設置が簡単であり、神経質にならなくてよく、誰でも容易にあつかえる、音楽や映画をたのしむことに集中できるスピーカーといえるでしょう。

なおスピーカーと壁の距離は、とくに低音に影響がでますので、スピーカーを前後させて適切な位置をみつけてください。

EPICON は、DALI スピーカーの最上位シリーズです。アーティストが意図したサウンドをあますことなく再現し、リスニングルームの隅々まで音楽をとどけます。

さきほどのワーフェデール・スピーカーとくらべると解像度・シャープネスがややたかく、人間の声などがはっきりくっきりきこえます。音量をしぼってもこまかい音まできこえるので、日本の住宅事情にはあっているとおもいます。深夜などでもつかいやすいスピーカーでしょう。

そしてよけいな共振をふせいでいる高剛性キャビネットが明瞭なサウンドに適度な響きをくわえています。もし可能なら、キャビネット(筐体)をかるく指でたたいてみて、どのような音がするか? よいスピーカーはかたくしまったよい音がします。わるいスピーカーはしまりのないボコッとした音がします。

またエレガントなデザインにも注目してください。

12畳以下の比較的せまいルームでしたらブックシェルフ型がよいです。キャビネットがちいさいほうがよけいな共振がすくないので音質が明瞭です。フロアスタンディング型では低音がふくらみすぎます。

なお EPICON が高価すぎると感じる場合は、ロングセラーモデル・ヒット商品の DALI MENUET もおすすめです。

DALI MENUET










ナスペック・ブース
- 音楽の都のスピーカー -

ウィーンアコースティックスのスピーカーにつてオーディオ評論家の山之内正さんが解説・実演しました。

  • 電源コンディショナー:IsoTek
  • SACD/CD プレーヤー:Playback Designs DREAM SERIES MPS-8
  • アンプ:ROKSAN、PRIMARE
  • スピーカー:Vienna Acoustics Beethoven Concert Grand Reference 

音楽の都・ウィーンからスピーカーがやってきました。とにかく、うつくしく上質に音楽をかなでます。つややかな芸術の世界がひろがります。

世界最高峰のオーケストラ、ウィーンフィルハーモニーの音質・音色がモデルになっているのではないでしょうか。世界各国のオーケストラが高性能な現代の楽器をつかっているのに対し、ウィーンフィルハーモニーはかたくなに伝統をまもり、ウィーンの楽器をつかい、ウィーンの奏法によって独自の音をうみだしています。その音楽のうつくしさは世界の音楽ファンを魅了しつづけます。

このスピーカーは、流行をおいもとめるスピーカーではありません。ウィーンでうまれた音楽が、「クラシック音楽」として時代をこえて普遍性をもったように、いつまでも飽きがこない、ながきにわたり愛用できるスピーカーです。高解像をただおいもとめる現代の機器とは一線を画する、大人のスピーカーです。

ウィーンアコースティックスがうみだす上質な「香り」によいしれてください。ウィーンフィルハーモニーの音質・音色を愛する人、ウィーンの音楽あるいはクラシック音楽をこのむ人には是非ともきいていただきたいスピーカーです。
Vienna Acoustics(メーカーサイト)

なおナスペックは、電源コンディショナーとして世界的にヒットしているアイソテック(IsoTek)もとりあつかっています。アイソテックがもたらすクリーン電源とウィーンアコースティックとのくみあわせが、芸術的な雰囲気と高音質を一層ひきたてます。

オーディオのグレードアップのためにアイソテックも検討してみるとよいでしょう。
IsoTek(メーカーサイト)



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Vienna Acoustics Haydn JUBILEE
(30th Anniversary Model)



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IsoTeK 電源コンディショナー










アクシス・ブース

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スコットランドから来日したファインオーディオ技術者・アンジー=ソナスさんが同社のスピーカー Fyne Audio F500 を解説・実演しました。

このブースにあとからはいってきた人には、となりにならんでいる大型スピーカーがなっているのではないかという錯覚が生じたかもしれません。Fyne Audio F500 はブックシェルフ型ですが、その音は、大型スピーカーにもまけない力強さ、安定感をもちます。こもらない明瞭な低音、それによってのびる高音、音像定位も抜群によく、等身大のボーカルがくっきりうかびあがります。スピーカーの存在はきえ、ストレスがない自然な音響に体がつつみこまれます。まるでマジックです。Fyne Audio F500 は、わたしがあらたに今回みつけたスピーカーのなかでとくに印象にのこったスピーカーです。

一見して、タンノイのスピーカーに似ているとおもいました。それもそのはず、ファインオーディオのメンバーは、テクニカルディレクターのポール=ミルズ博士をはじめ、主要メンバーがタンノイの元エンジニアで構成されているのでした。彼らは、理想のスピーカーをうみだすために、2017年に、ファインオーディオをたちあげました。できて間もない会社ですが、タンノイの伝統をふまえて技術革新をおこなっているという感じがしました。

音像定位が抜群にいいのは、「ISOFLARE(アイソフレアー)」という同軸構造の点音源システムをもつからです。つまり、ウーファーとツイターを1つのユニットにくみこみ、音軸の中心を共有した構造により理想の点音源を実現し、にじみのない音像をうみだしています。点音源システムは、その効果とひきかえに するどい指向性を余儀なくされ、適切な音がえられる場所(スイートスポット)がせまくなることがありますが、ISOFLARE では、音の放射角を綿密に計算して広域エネルギーを等方向に拡散放射することで指向特性をおおきく改善しました。宇宙の1点から発したフレアー光が全方向に放射拡散されるように音響空間がひろがります。

また「BASSTRAX(ベーストラックス)」という技術により、低域の放射特性も圧倒的に改善しています。低域ポートは、一般的なバスレフ構造とはことなり、エンクロージャーの底部に下向きに配され、さらにその開口部には亜円錐状のディフューザーをもうけています。ポートから発する垂直プレーン波エネルギーを90度むきをかえて360度にわたる均一な波面に変換し、壁面からの部分的なつよい反射をおさえ、クリアで力強い低域再生を実現します。

くわえて、「FYNEFLUTE(ファインフルート)」という技術により、よけいな共振やカラーリングを排したきわめて自然なひびきのミッド/バス再生を実現しています。ウーファー・コーンのエッジに、特殊な溝(フルート)をきざみこんだ独特な曲面形状をもたせ、コーンからうける振動を収束させ、エッジの固有振動を排除し、エッジからコーンへのよけいな反作用をおこさせません。


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Fyne Audio F500


このように、Fyne Audio のスピーカーは独自の新技術を投入した、手のこんだアイデア商品です。オーディオ・マニアや機器がすきな人にとってかなり興味ぶかい製品です。

Fyne Audio F500 は高性能スピーカーであり、12畳以下の比較的せまい部屋でしたらこれで十分です。この性能でペア約10万円というはかなりお買い得だとおもいます。


Fyne Audio F500










トライオード・ブース

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ボーカリストの井筒香奈江さんをゲストにおむかえして、井筒さんらの演奏を録音したダイレクトカッティング・レコード(LP)をききました。

通常のアナログ録音では、テープに演奏をまず録音し、それに編集をくわえてマスターテープをつくり、その録音をレコードにカッティングするという手順をふみますが、ダイレクトカッティングでは、テープには録音せずに、カッティングマシンをつかってカッティングをレコード原盤に直接する(録音する)という方法をとります。これにより、余計なものがはいりこまず、かぎりなくオリジナルの音にちかいピュアな録音ができます。


しかしダイレクトカッティングでは一切のミスがゆるされず、わずかでもミスがあったらレコードの片面を最初からとりなおさなければならないので、演奏家にも録音エンジニアにもきわめて高度な緊張がしいられます。井筒さんらも、録音がおわったときにはへとへとになったそうです。

今回のイベントでは、ダイレクトカッティングについての説明のあとで、井筒香奈江さんがうたう『カナリア』(作詞作曲:井上陽水)などをききました。誰もが息をのんで集中して、かぎりなく透明な歌声にききいりました。これほど高度な緊張感がただようオーディオ・イベントはめったにありません。井筒香奈江さんが目の前でまるでうたっているかのような、切れ味のよさをこえたリアルがここにはあります。

井筒さんが、録音現場で気がついたことしてつぎのことをかたっていました。
「かなりちいさな音で録音エンジニアが録音をきいていたので、びっくりして質問してみたら、
『ちいさな音でどこまできこえるかをチェックしているんです。ちいさな音量でたえずきくことで自分の聴覚の訓練をしているんです』
ということでした」

音量をしぼってきく、ちいさな音できくことは実は重要なことです。

インターナショナルオーディオショウをはじめ、オーディオの大抵のイベントでは通常よりも大音量で演奏することがおおいです。たとえばおなじ機器であっても、音量をしぼってきくよりも音量をあげてきいたほうがよくきこえます。音量をあげただけで高級機器に変化したような錯覚がえられます。イベント会場やオーディオ店でよい音がしたとおもって購入してみたが、自宅できいたらよくなかったという話はよくききます。自宅では音量をあげられないという簡単なことが原因になっていることがあります。

イベントでの大音量は本当はいけないことです。だいたい難聴になりかねません。通常よりも小音量にしろとはいいませんが、普通の音量で実演してこそ機器の本当の実力がわかります。聴衆も、聴覚の訓練になります。

大音量・大圧力は、実は、お客さんをだますもっとも簡単なテクニックです。迫力を感じて、何もしらないお客さんはよろこんでかえっていきます。

トライオードのブースでは、トライオードの真空管アンプとフォーカルのスピーカーをつかって通常の音量でききました。大音量にする必要などありません。

真空管は、ガラスの筒のなかに金属板と金属線が配置され、これらが共振することによって本来の音楽信号に響きがつけくわえられ、この響きが音に艶をうみだします。真空管アンプは、原音に「味つけ」をして、よりうつくしく音楽を演奏します。管理とメンテナンスに労力がかかるにもかかわらず、真空管アンプ愛用者がいまでもいるのは、その独特な甘美なサウンドにほれこんでいるためです。
しかし真空管アンプの欠点としては低音がゆるい、低音にしまりがないということがあげられます。それを克服したのが、今回発売された TRIODE MUSASHI です。低音がふくらみすぎず、かたくしまって安定しています。トライオード創設25周年を記念する自信作です。
真空管プリメインアンプ TRIODE MUSASHI(メーカーサイト)

井筒香奈江さんも、トライオードの真空管アンプを自宅ではつかっているそうです。スピーカーは BBC モニタースピーカーの LS-3/5a だそうです。

昨日のイベント・リハーサルでは、TRIODE NUSASHI をつかい、スペンドールのスピーカーとフォーカルのスピーカーとをききくらべて、つぎのような感想をもったそうです。
「スペンドールはやさしい音、フォーカルは明瞭な音、フォーカルをきいているとハッとさせられることがあります」

トライオードは、輸入スピーカーとしてはスペンドールをとりあつかっていますが、今回のイベントでは、他社がとりあつかっているフォーカルをつかっていました。スペンドールはクラシックな音がしますが、フォーカルは高解像の現代的な音がします。今回のイベントではフォーカルが適合していたとおもいます。一般的にも、フォーカルのスピーカーがおすすめです。

なかなかおもしろい企画でした。このようなイベントは毎年やっていただきたいとおもいます。










フォステクス・ブース

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フォステクスとは、音響機器メーカーのフォスター電機がもつ自社ブランドであり、同社はおもに、OEM(original equipment manufacturer:他社ブランドの製品を製造するメーカー)で、すぐれたスピーカーユニット(電気信号を振動に変換して音をだす部分)を国内外の音響メーカーに供給していることでよくしられています。

今回のイベントでは、フォスター電機創業70周年を記念して、スピーカーユニットに焦点をあてた実演をしていました。

注目はフォステクス・フルレンジスピーカーです。近年のスピーカーは、2ウェイ(音域を2分割し、ウーファーとツイーターの2種のスピーカーユニットで再生)や3ウェイ(音域を3分割し、ウーファー・スコーカー・ツイーターの3種のスピーカーユニットで再生)が主流ですが、フルレンジスピーカー(1ウェイ)はひとつのスピーカーユニットですべての音域をカバーします。

フルレンジスピーカーがかなでる音楽の違和感のなさ、ストレスのなさ、自然さをあらためて感じました。高音と低音がややよわくなるきらいはありますが、にごりがない明瞭な音、点音源なのでくっきりした音像もあらわれます。

たとえばビオラやバイオリンの音をきいていると、低音から高音までまったくおなじ音色・音質です。ここちよい、うつくしい音楽がきこえます。調和が感じられます。

これに対して2ウェイや3ウェイのスピーカーでは低音と高音を強調したり、ウーファーとツイーターの材質をかえることによって、ゆたかな低音とシャープな高音を実現したりしていますが、ビオラやバイオリンなどの低音部と高音部とで音色・音質がことなるといった違和感を感じることがあります。とくにビオラの音色のうつくしさをしっている者にとっては、途中で音色がかわるようなことがあるととてもきいていられません。高音が、変な金属音になって耳をふさぎたくなることもあります。

楽器などをやっていて聴覚のよい人はもちろんですが、このような違和感に対しては、実は、人間は誰でも敏感であり、無意識のうちに違和感は心身に影響します。違和感はいずれ現実になり不幸をもたらします。人間関係でもそうです。違和感は前兆です。

高解像・高音質のためなら、多少の違和感は我慢しようという姿勢はいただけません。高解像・高音質の追求よりも違和感をなくす、バランス・調和をもとめることを優先すべきです。高度なバランス・調和が実現するなら、解像度は多少ひくくてもかまいません。

したがって2ウェイや3ウェイのスピーカーを購入する場合でも、低音から高音へのつながりのよさ、連続性、全体のバランスと調和に配慮することが肝要です。

今回のフォステクスの実演では、解像度はややひくいですが、それをこえる音楽のうつくしさにききいることができました。

またこのブースの実演は、1曲あるいは1つの楽章を最後まできく、途中で曲をフェードアウトしないという方式でした。これがいいんです。音楽をきいていて、いいところにさしかかっているのに急に曲をきってしまうプレゼンターがほかにはいましたが、そのようなことができるのは音楽をきいていない証拠です。音楽をたのしんでいたなら、いいところで曲をきれるはずはありません。

オーディオをつかって何をするのか? 音楽をきくのであって、物理的・工学的な音をチェックするのではありません。物理的・工学的に音を検査しているだけでは音楽はきこえません。芸術の鑑賞はできません。オーディオ機器のために音楽があるのではなく、音楽のためにオーディオ機器があるのです。

1曲あるいは1つの楽章を最後まできくことによっても違和感がなく、ストレスがなく、気持ちのいい時間をすごすことができました。