適切な場所におくだけでルームチューニングができます。音がクリアになり、音像定位がよくなり、音場がひろがります。臨場感を味わえます。
日本音響エンジニアリング「Acoustic Grove System」試聴会に参加しました(会場:ダイナミックオーディオ、講師:オーディオ評論家 黛健司氏、日本音響エンジニアリング 根木氏)。

Acoustic Grove System はルームチューニング・アイテムとしてよくしられ、たかい評価をうけています。響きをのこしながら、不快な音はとりのぞき、低音の濁りをとくになくす効果があります。リスニングルームを理想の環境にちかづけ、オーディオ機器のポテンシャルを最大限にひきだします。

イベントでは、Acoustic Grove System をまったく設置しない状態と設置した状態とを徹底的にききくらべました。設置したときの効果は一目瞭然ならぬ「一聴瞭然」でした。音像定位がよくなり、音質がクリアになり、音場がひろがりました。リスニングルームがひろくなったような感覚がえられます。いいかえると、普通の状態の部屋はいかに音響がわるか、よくわかりました。


SYLVAN(シルヴァン)
Acoustic Grove System のコア技術をコンパクトにまとめて製品化したアイテムです。音響効果を手軽にたのしめます。コンパクトな形状のなかに円柱群が配置されています。自立式のため部屋のどこにでも自在におくことができます。


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配置の例


イベントでは、何も設置しない状態と上図の配置Aとを比較しました。音質がクリアになりました。




ANKH - I(アンク STシリーズ:フラットタイプ)


ANKH-I



ANKH-I 配置
配置の例

SYLVAN の配置Aをのこしたまま、ANKH - I のない状態と上図の配置Dとを比較しました。音像定位がよくなりました。




ANKH - II(アンク COシリーズ:コーナータイプ)


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ANKH-II 配置
コーナーに配置


ANKH - I(配置D)をのこしたまま、ANKH - II をコーナーに配置しました。低音のにごりがきえ、音のぬけがよくなりました。音場が大きくなりました。コーナーがいかに音に悪影響をあたえているかがよくわかりました。


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オーディオショップやオーディオのイベントにいくと、Acoustic Grove System あるいはその他の音調版がリスニングルームにおいてあります。しかし最初からおいてあるのでその効果があるのかないのか、直接確認することはできませんでした。今回のイベントで、設置したときと設置しないときのちがいを徹底的に比較することができ、その効果の大きさがわかりました。とくに、比較的せまいリスニングルームでは効果が大きくあらわれるでしょう。

今回のイベントにかぎりませんが、オーディオ機器は比較してこそそれぞれの効果や個性がわかります。イベント開催にあたっては比較実験を今後ともおねがいします。

日本音響エンジニアリングの根本さんは「適切に音をくだく」という表現をしていました。響きを消すのでもなく、よく反射させることでもなく、部屋全体の響きをととのえることが重要です。

人間が音楽をきくとき、直接音だけをきいているのではなく、壁や床・天井に反射した音もきいています。しかし反射音は、直接音よりもわずかにおくれて耳にとどきます。この時間差が問題です。適切な時間差があれば、反射音がまったくないときにくらべてここちよくきこえますが、時間差が不適切な(たとえば時間差が極端にみじかい)場合は音がにごったようにきこえます。これがむずかしいのです。音がにごるくらいだったら、まったく反響がないほうがかえってよいとかんがえ、徹底的に反射をおさえたデッドな環境にする人もいます。

しかしそれでは、コンサートホールのような臨場感がうまれません。音楽につつみこまれる体験がえられません。やはり響きがあったほうがよいです。また音波は、耳だけできくのではなく、顔や頭や胸などにも反射しながら鼓膜にとどきます。前からの音、側方からの音、上方からの音、後ろからの音、それぞれに反射のしかたがことなり、そられが総合されてこそここちよさを感じます。

ルームチューニングをうまくすれば低音と高音のエネルギーバランスも適正になり、スピーカーの音がまるで「生演奏」のように生き生きとかがやき、躍動をはじめます。

ルームチューニングは、Acoustic Grove System をおくだけで簡単にためすことができます。まずは SYLVAN 2台を、側方、スピーカー後方の中央、部屋のコーナーなどにおいてみてそれぞれの効果をたしかめるのがよいでしょう。

側方の適切な場所におけば壁からの反射が調整されて音がクリアになります。スピーカー後方の中央におけば音像定位がよくなります。部屋のコーナーにおけば低音のぬけがよくなって音場がひろがります。

Acoustic Grove System は見た目よりもはるかにがっしりとつくられていて、円柱の木材は高密度で重量もかなりあります。もともとは業務用であったものを、要望にこたえて民生用もつくったということで、高額ですが非常に質のたかい製品です。とくに ANKH は円柱が多数ならんでいてこちら側からむこう側はみえません。高密度の森林をイメージしたようなつくりです。

講師の黛健司さんによると、オーディオメーカーも試聴ルームでは結構苦労しているそうです。黛さんが訪問したところではマランツの試聴室がよくできており、ここも、日本音響エンジニアリングが協力してつくったとのことです。さまざまなオーディオショップにいってみるとリスニングルームの工夫がみられます。

リスニングルームはひろければよいというわけではなく、ルームの縦・横・高さの比が重要です。天井がひくいと低音がぬけません。特定の定在波(進行波と反射波がかさなりあった干渉)が生じないほうがよいです。ルームの中間付近で区切った方が音がよくなることもあり、中間でくぎっているところもたしかにあります。

専用のリスニングルームをつくったからといってすぐに音がよくなるわけではありません。オーディオ機器のセッティングとともに、ルームチューニングを2〜3年かけてやるとよいでしょう。地道な努力がつづきます。


▼ 注
Acoustic Grove System - ナチュラルで心地よい音場を実現するルームチューニング機構 -
柱状拡散体 Acoustic Grove System