さまざまなスピーカーがあります。比較試聴すると、スピーカーの個性や性能がわかります。

OTOTEN(AUDIO・VISUAL FESTIVAL 2018)主催の「音のサロン」、「話題のスピーカー比較試聴会」(講師:麻倉怜士氏)に参加しました。

使用機材はつぎのとおりでした。

スピーカー
  • KRIPTON KX0.5
  • FOSTEX GX100BJ + CW250D
  • SPENDOR Classic1/2
  • TANNOY Stirling/GR
  • FOCAL Kanta N° 2
  • B&W 803D3
SA-CD/CD プレーヤー:Pioneer PD-70AE(S)
アンプ:SPEC RSA-F11



■ KRIPTON KX0.5

KX-0.5 は2ウェイ密閉型のブックシェルフで、本体サイズは幅 194 × 奥行き 295 × 高さ 352 mm、重量7.4kg とコンパクトです。35mm のピュアシルク・リングダイヤフラム型ツィーターと、140mm の CPP 素材のコーン型ウーファーを使用、インピーダンスは 6Ω、再生周波数帯域は 50Hz~50kHz、出力音圧レベルは 87 dB/Wm です。

密閉型らしくクールで硬質な音質、くっきりはっきりしたあかるい音色、こまかい音までよくきこえます。密閉型スピーカーの入門機としておすすめできます。

KRIPTON KX-0.5 のサイト



FOSTEX GX100BJ + CW250D

GX100BJ は、KRIPTON から一転して雰囲気重視のスピーカーです。これだったらどんな音源をもってきても(録音が多少わるいものでも)安心してきけます。角のとれたあたたかみのある音質に誰もがいやされます。バスレフ型であり、低音の量感も十分です。
  • 形式 :2Wayバスレフ型(クロスオーバー:1.8kHz)
  • 使用ユニット:20㎜純マグネシウムリッジドーム形状振動板ツイーター(高音用)、10㎝アルミニウム合金HR形状振動板ウーハー(中・低音用)
  • 再生周波数帯域:55Hz~45kHz(-10dB)
  • インピーダンス:6Ω(最小値:4.27Ω at210Hz)
  • 外形寸法:160(W)×262(H)×231.5(D)mm(グリル含む)
  • 総質量:5.4㎏(グリル含む)

今回はサブウーハー CW250D 2台を接続しての試聴となりました。サブウーハーのおもな役割はリスニング空間の空気感や音楽の雰囲気をよくするということであり、低音を増強してガンガンならすというのではありません。誤解しないでください。サブウーハーを接続すると、音波が肌にあたってここちよい感触が生じます。また倍音がでるので中高域もゆたかになります。このバランスのよさ、安心感、ゆたかな音場につつみこまれる感覚がすばらしいです。

サブウーハーは1台でも効果がありますが、2台にすれば効果は倍増します。

まず、ブックシェルフ型スピーカーを買って、余裕ができたらサブウーハーを買いたすというのでもよいでしょう。サブウーハーはまず1台かって、あとでもう1台かいたしてもよいです。さらに余裕がでてきたら AIRBOW 波動ツイーターを買いたしてもよいです。

そしてさらに余裕がでてきたら、メインのブックシェルフ型スピーカーを上級モデルに買いかえます。

こういった逐次方式で、スピーカーシステムをグレードアップしていく方法があります。オーディオマニアにはとくにおすすめの方法です。逐次アップの過程で耳もこえてくるでしょうし、オーディオに関する理解もふかまります。

FOSTEX のスピーカー



■ SPENDOR Classic1/2

気品のある音質、大人のスピーカーです。

SPENDOR は、BBC の音響研究開発部門に所属していた創立者のスペンサーとその妻 ドロシーの名を合成した社名です。2001 年には、フィリップ=スイフト氏に買収されましたがナチュラルな音の伝統はかわりません。

  • 形式 :3ウェイ3スピーカー、バスレフ型
  • 高域ユニット:22mm広帯域ソフトドーム
  • 中域ユニット:150mmEP77ポリマーコーン
  • 低域ユニット: 210mmポリマーコーン
  • 出力音圧レベル:87dB
  • クロスオーバー:415Hz、2.7kHz
  • インピーダンス:8Ω
  • 周波数特性:30Hz~25kHz
  • 最大入力:200W
  • 入力端子:金メッキバナナプラグ対応
  • 低域/中域/高域独立、4mm穴
  • 外形寸法 :横308×奥行374×高621mm
  • 質量 :22kg

音の傾向は、先の KRIPTON よりも FOSTEX にちかいですが、音の解像度は FOSTEX よりもかなりたかいです。しかし高音質追求というよりもバランス重視であり、とくにクラシック音楽にむいているのではないでしょうか。エレガントな雰囲気に是非ひたってください。

SPENDOR のスピーカー



■ TANNOY Stirling/GR

KRIPTON よりも FOSTEX よりも SPENDOR よりもあきらかにエンクロージャーがなっています。ひびいています。いま試聴しているこの会場は正直いって音調がよくできていません。音響がわるいです。しかしエンクロージャーがとてもよくひびいているので、そのことをわすれさせてくれます。音楽そのものがたのしめます。いいかえると、リスニングルームのルームチューニングがおもっていた以上に重要だということもよくわかります。

みごとな TANNOY サウンド。ヴァイオリンはストラディバリウスのように、金管楽器は木管楽器のように、ボーカルはオペラ歌手のように、交響楽団はウィーンフィルのように、やわらかく うつくしく はなやかに、上質な音楽がかなでられます。

これは、原音を忠実に再現するスピーカーではありません。音楽そのものをたのしむためのスピーカーです。音楽につつみこまれたい、音楽にいやされたい、音楽と一体になりたい、そんな人におすすめします。

TANNOY Stirling/GR の上級機に Turnberry/GR があり、価格差があまりないために Turnberry/GR を奮発して買う人が多いそうです。しかしちょっとまってください。Stirling/GR は、バランスのよさ、安定感・安心感がすばらしいですが、Turnberry/GR はバランスが若干くずれているように感じられることがあります。性能と価格は比例しないことがあります。比較試聴を購入前にかならずしてください。なおさらに上級機に Kensington/GR があり、これは TANNOY のよさ・伝統をひきつぎながらも、さらなる高音質化をはかった現代的なすぐれたモデルです。バランスもよいです。是非一度試聴してみてください。

TANNOY PRESTIGE Gold Reference



■ FOCAL Kanta N° 2

Kanta N° 2 は、今年3月に発売されたばかりの、FOCAL のあらたなスピーカーシリーズ “Kanta” の最初のモデル、3ウェイ・4スピーカー・バスレフ型のフロア型スピーカーです。

KRIPTON KX0.5 や FOSTEX GX100BJ とは格がちがいます。価格差だけのことはあります。SPENDOR Classic1/2 とくらべるとこちらの方がいっそう現代的です。ハイレゾの音になれてきた人にはこちらの方がよいでしょう。

TANNOY Stirling/GR とくらべると、ベリリウムツイーターの効果などのためか解像度がかなりあがります。音の粒だちがいいです。しかしモニター調の硬質な音質ではなく、コンサートホールの1階S席の中央できいているような臨場感がえられます。演奏をチェックするというよりも音楽そのものをたのしむためにむき、芸術的な表現力がすばらしです。

色彩感ゆたかであかるい音色、エレガントで繊細で上品な音質、それにエンクロージャーのデザインも、いかにもフランス的といった感じです。

FOCAL のスピーカーはフランス音楽に最適です。とくにフランス印象派音楽などをきいたら最高です。クラシック音楽だけでなくジャズ、小編成の音楽にもいいでしょう。逆に、いわゆるジャーマンサウンドではないため、きわめて重厚なドイツ音楽などではやや軽く感じられるかもしれません。

Focal のスピーカー



■ B&W 803D3

TANNOY とも FOCAL ともタイプがちがいます。モニター調の硬質な骨太の音質です。はっきりくっきり力強く、前へ音をおしだし、音を構築していきます。パワーで他を圧倒します。

FOCAL がフランス音楽にむいているとしたら、B&W はドイツ音楽にむいているかもしれません。

交響曲をきいていたら、ふとい何本もの柱で全体をささえる巨大な石の建造物がイメージされました。ジャズでは、こまかい音までみごとに表現する一方、ウッドベースのかたくしまった低音が、はじけるように体につたわってきて気持ちいいです。ライブをこえています。

しかし TANNOY や FOCAL をきいたあとだと無骨に感じられます。フォーカルには遊び心がありました。

B&W の設計思想は「過ぎたるは及ばざるがごとし」。無駄がありません。概観も、あらゆる無駄をいかにもそぎおとしたといった感じです。設計思想は概観にもあらわれます。

それぞれのスピーカーにはそれぞれに設計思想がありますが、それはちがいであって優劣をつけることはできません。

B&W のスピーカー 




以上のように、いくつかのスピーカーを短時間のうちに比較試聴すると、それぞれのスピーカーの個性と性能がよくわかります。

試聴するときの音源は、音の数がすくないソロ、ボーカルソロ、ヴァイオリンソロ、ピアノソロなどがよいです。ソロでききくらべると一発でちがいがわかります。低音から高音までのつながりぐあいもチェックできます。交響曲での試聴は最後にしたほうがよいです。

またリスニングルームの音調・音響にも注意してください。スピーカーはたいしたことがなくても、ルームチューニングがよくできているとたいへんよくきこえます。臨場感も生じます(注)。

スピーカーには、よくうれてものとそうでないものとがあります。オーディオ誌や評論家の評価もあります。ショップのおすすめもあります。しかしそのようなことは参考程度にとどめ、比較試聴を購入前にかならずして、みずから主体的に判断することが大切です。


▼ 注
たとえば、演奏レベルがあまりたかくない管弦楽団であっても、音響のいいサントリーホールできくとすばらしい音楽がきこえます。他方で、一流の管弦楽団であっても、音響のわるいNHKホールできくとひどい音、まったくたのしめません。おもっている以上に音調・音響が重要です。