約 140 年におよぶオーディオの歴史をふりかえりました。ステレオレコード、CD、インターネット配信は大きな技術革新でした。オーディオ文化、オーディオ芸術が発展していきます。

OTOTEN(AUDIO・VISUAL FESTIVAL 2018)主催の「音のサロン」、「フォーマット比較試聴会(音楽再生メディアの歴史 〜音源で辿るハード・ソフトの変遷〜)」(講師:麻倉怜士氏)に参加しました。

音楽再生メディアの歴史をたどりながら、それぞれの歴史的音源を実際にきくというとても貴重なイベントでした。


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使用機材はつぎのとおりでした。
  • アナログプレーヤー:CS Port LFT1
  • カートリッジ:Phasemation PP-500
  • フォのイコライザーアンプ:CS Port C3EQ
  • CD/SACD/BD プレーヤー:OPPO Digital UDP-205
  • USB-DAC/ネットワークプレーヤー:DELA HA-NIAH 20/2
  • オープンリールデッキ:TEAC X-1000R
  • カセットデッキ:Columbia Viva-tonal Grafonola No.201
  • アンプ:SPEC RPA-W1ST
  • スピーカー:SPENDOR Classic 1/2
  • 電源ボックス:KRIPTON PB-HR1000 など
  • ラック:YAMAHA GTR-1000
  • 調音パネル:YAMAHA ACP2


1.オルゴール
オルゴールはもっともふるい音楽再生メディアです。河口湖オルゴールの森美術館にいくとオルゴールがかなでるさまざまな音楽をたのしむことができます。

2.円筒式蓄音機
1877年、エジソンは、音楽を録音・再生する装置を発明しました。この蓄音機で録音したエジソンの声をききました。オーディオの歴史のはじまりです。

3.ベルリーナの円盤式蓄音機
1887年、アメリカのエミール=ベルリーナが、平円盤式蓄音機「グラモフォン」を発明しました。

4.SP 蓄音機
1909年、英国グラムフォン社が、「Standard Playing」(SP/78回転、再生時間は4分半)で規格統一しました。SP 時代のはじまりです。

5.ラジオ
1920年、ラジオ放送局、ピッツバーグの KDKA 局が開局しました。日本では 1925年に、ラジオ実験放送がはじまりました。

6.電気式蓄音機
1925年、ウエスタン・エレクトリック社が電気録音方式を開発しました。1937年、日本ビクターが、純国産電蓄1号機「RE-48」(480 円)を発売しました(当時の大卒初任給は約 100 円)。

7.モノラル LP
1948年、モノラル LP が、米国 CBS コロンビアから発売されました。1951年、日本コロムビアより、洋盤 LP が発売されました(2,300円、当時の公務員初任給は 5,500円)。1953年、日本ビクターが、レコード製造の全工程を国産化した LP をはじめて発売しました。

モノラル LP で、トスカニーニ指揮・NBC 交響楽団で、ドボルザーク作曲・交響曲第9番「新世界より」をききました。ややはやめのテンポで力強くすすんでいく演奏が印象的でした。

8.ステレオ
1950年、ステレオレコード規格が 45/45 方式に決定されました。1958年、日本ビクターが、わが国初のステレオセット「STL-1S」を発売しました。同年、日本ビクターと日本コロムビアが、ステレオ LP を発売しました(2,800 円、当時の大卒初任給 12,700円)。

日本ビクターが制作した「ステレオへの招待 モノラルとステレオの比較」をききました。モノラルとステレオでは大ちがいいです。ステレオになって音像が立体的にひろがり、大きな音場がうまれます。臨場感のある音楽再生が可能になります。ステレオは、オーディオ史における大きな技術革新、革命でした。

9.FM 放送
従来のラジオ放送よりもはるかに高音質になりました。

10.オープンリール
FM 放送などの録音(エアチェック)が一般家庭でもできるようになりました。楽曲を録音したオープンリールも販売されました。

FM 生中継をエアチェックした音源、カラヤン指揮・ベルリンフィルハーモニー管弦楽で「ベートーヴェン作曲「田園」(大阪国際フェスティバルホール、1973.10.29)をききました。ややはやめのテンポで、誰もが親しみやすい、わかりやすい演奏でした。また天地真理もききました。まさに「懐メロ」でした。

11.カセットテープ
1962年、フィリップスがカセットテープ方式を開発しました。カセットテープが普及して、エアチェックが誰でも手軽にできるようになりました。音楽ファンは片っ端からエアチェックをするようになりました。すきなアーティストの演奏や気にいった楽曲をくりかえしてきくことが簡単にできるようになりました。FM 放送とカセットテープのはたした役割は大きかったです。

さだまさし「関白宣言」(NHKホール、1980.1.3)をききまた。

12. モジュラーステレオ
1966年、ナショナルが、モジュラー・ステレオ「SC-120」を、オンキヨーが卓上ステレオを発売しました。ステレオレコードを一般家庭でも手軽にたのしめるようになりました。アンプとプレーヤーがひとつにまとまり、左右のスピーカーと計三点式の装置でした。現在のミニコンポの前身になりました。1975年になると、ステレオラジカセが発売されました。

13.CD
1979年、フィリップス社が CD 方式を発表、ソニーとともに共同開発を開始、1982年、ソニーが、世界初の CD プレーヤーとソフト(15 タイトル)を発売しました。同年、国内9社が、単体 CD プレーヤーを一斉に発売しました。デジタル時代の幕開けです。

13.  MD
1993年、ソニーが MDS-101 を発売しました。

14.  SACD、DVD-AUDIO
1999年、ソニーが、SA-CD プレーヤーを発売しました。2000 年、松下・ビクター・パイオニア・東芝などが DVD-Audio を発売しました。人間の耳にはきこえませんが身体では感じることができる超音波をも収録し、高音質化を実現しました。しかし専用プレーヤーが再生には必要だったためあまり普及しませんでした。

15.  UHQCD、ガラス CD
従来よりも高音質な CD が発売されました。既存の CD プレーヤーで再生できるという利点があります。

16.  ハイレゾ配信
2011年から、ハイレゾ配信(CD よりもはるかに高解像・高音質)がはじまりました。音楽配信、音楽ダウンロード、ストリーミングなど、インターネットをつかって音楽をたのしむ時代になりました。

17.  BD オーディオ
プルーレイディスクによるハイレゾリューション・オーディオがはじまりました。

18.  アナログレコードの復活
アナログレコードは実は音がよかったのです。高級な再生装置をつかえば CD よりもはるかに高音質で音楽をたのしめます。

クライバー指揮・ウィーンフィルハーモニー管弦楽団でベートーヴェン「運命」をききました。アナログレコードからはとてもなめらかでうるおいのあるうつくしい音楽が再生されます。これぞレコード芸術です。




以上、エジソンの発明以来、約 140 年におよぶオーディオの歴史を見てそして聴いてきました。ステレオレコードの発明、CD の発明、インターネットによる音楽配信はいずれもオーディオ史上の大きな技術革新、革命でした。

  • エジソンの発明
  • ステレオレコード
  • CD
  • インターネット配信

ところが「18. アナログレコードの復活」とはどういうことでしょうか。最近、アナログレコードの音がやっぱりよかったと感じる人がふえています。いいかえると CD の音はよくなかったのです。1980 年代当時、「CD はおもしろくないんですね」といって CD はいっさい買わず、あいかわらず LP を買っている人がわたしがよくいくショップにいました。今からおもうとその人の耳は本物でした。

CD がでてきたとき、多くの人々が LP よりも音がよくなったとおもいました。クラシックの著名な音楽評論家も「CD になったら音がいいんですね」といって、FM 音楽番組で CD を再生するようになりました。わたしも、オーディオ雑誌をよんだりショップの話もきいたりしてそのようにおもいこみ、これからは CD の時代だとおもって CD を買いあさり、アナログプレーヤーをすてたりしました。

しかしこれはまったくの誤解・愚行でした。メーカーとショップと評論家たちにおどらされていただけでした。やはり、他者がどう言ったかではなく、自分の耳できいて自分がどう感じるか、自分がどうおもうかがもっとも重要です。みずから判断する。主体性が必要です。

先日も、自分のもっているスピーカーが有名ショップから低く評価されてがっくりしている人がいましたががっくりする必要はまったくありません。自分がどう感じているかが一番重要なのです。他者の評論は参考程度にとどめればよいでしょう。

もっともアナログレコードで高音質再生をしようとおもったら、それなりの機器が必要です。近年、機器の高性能・低価格化がすすんだこともあり、アナログがききなおされるようになったともいえます。

そしてハイレゾの登場です。初期のハイレゾには変な音源もありましたが、最近は、ハイレゾはたしかに音質がよいと感じます(ただしそれなりの機器がこれにも必要です)。CD からはじまったデジタル技術が 30 年以上かかってアナログにようやくおいついたといってもよいでしょう。なお最近の CD プレーヤーや DAC(デジタル/アナログコンバーター)はアップコンバージョンによって たりないデータをおぎなっているため、従来の普通の CD であっても高音質で再生ができるようになりました。

技術の進歩、機器の発展、低価格化により、30 年前だったら 100 万円、200 万円をかけないとだせなかった音が、今では、その 1/5 とか 1/10 の金額でだすことができます。誰でも手軽に高音質で音楽をたのしめる時代になりました。すばらしいことです。




今回の試聴会ではとりあげられませんでしたが、2チャンネル・ステレオ再生からサラウンド再生へという進歩もありました。サラウンド技術の進歩もいちじるしいです。映画だけでなく音楽もサラウンドできいてみるとびっくりします。臨場感がまします。次元がかわります。

サラウンド再生には AV アンプが必要です。AV アンプも高性能化がすすみ、ピュアオーディオなみの高音質で再生ができるようになっています。

しかし一般の消費者にとっては AV アンプはむずかしく感じられています。オーディオマニアでしたら、接続方法など、どうってことないでしょうが、ごく普通の人々にとっては接続方法・つかい方がわからなかったり、たくさんのスピーカーが最初から必要だと誤解していたりして、サラウンドは敷居がたかいとおもっています。

一般の音楽ファンは機械いじりをしようとしているのではなく、音楽をたのしもうとしているのですから、機器の操作は簡単でわかりやすいことが第一です。

メーカーやショップや評論家は音質・機能の向上だけでなく、接続や操作のわかりやすさをもっと追求すべきです。たとえばマニュアルをもっとわかりやすくする、解説ビデオをつくる、マニュアルがなくても接続・操作ができるような機器をつくるなど。

そもそも AV アンプやサラウンドといっても、2チャンネルからはじめればよいのです。あとで余裕ができたらスピーカーを買いたせばよいのです。このような初歩的なことも一般の消費者にはつたわっていません。マニアだけを対象にするのではなく、普通の人にも親切な説明が必要です。

AV アンプを1台かえば、テレビの音楽放送・映画放送も、ラジオ放送も、ブルーレイも、DVD も、ピュアオーディオも、音楽ストリーミングもすべてが高音質でたのしめます。音響空間ががらりとかわります。AV アンプ(AV センター)は一般家庭にもっと普及していいはずです。




世の中には、音楽ファンではあるがオーディオファンではないという人々がいます。わたしの友人にもそのような人がいます。

年に何十回もライブにいき、サイトウキネン・フェスティバル(現セイジ・オザワ松本フェスティバル)には初回から毎年いっているという根っからのクラシック音楽ファンですが、オーディオの話をわたしがしても聞く耳をもちません。

「音楽をきくのであって、オーディオをきくのではない。うちのオーディオは、安売りをしていたのを量販店でたまたま買っただけ。オーディオなんてどうでもいいんだ」

彼は、ライブが本物であり、オーディオは偽物だともっています。オーディオをバカにしています。オーディオによる本当の再生音楽をきいたことがまだありません。

オーディオをつかえば、ライブではきけない歴史的名演が再現できるのに。オーディオをつかえば、コンサートホールの特等席できいているような臨場感がいつもえられるのに。オーディオをつかえば、音楽家のこまかいニュアンスまでもききとれるのに。

オーディオできく音楽のすばらしさを彼にもぜひ知ってもらいたいとおもいます。本物の再生音楽をきけば心がかわるはずです。

オーディオはマニアだけのものであってはなりません。誰もが手軽に普通にたのしめるシステムでなければなりません。そのためには、わかりやすさがもっとも大事です。

オーディオ・ユーザーがふえればオーディオ文化が発展します。オーディオ芸術が確立します。底辺がひろがれば、それだけ頂点も高くなります。