スピーカーには、雰囲気重視のものと原音忠実のものがあります。実際に試聴して、自分のすきなサウンドがだせるスピーカーをさがすとよいでしょう。
OTOTEN 2017(東京国際フォーラム)の音のサロン「話題のスピーカー6機種比較試聴』(講師: 麻倉 怜士氏)に行ってきました(注1)。
試聴したスピーカーはつぎのとおりでした。
プレーヤーとアンプはつぎのとおりでした。
試聴したスピーカーはつぎのとおりでした。
- FOSTEX GX100BJ
- PIONEER S-PM50
- KRIPTON KX-5P
- TAD-ME1
- YAMAHA NS-5000
- B&W 802D3
プレーヤーとアンプはつぎのとおりでした。
- CDプレーヤー:LUXMAN D-06u
- アンプ:SPEC RSA-F11
FOSTEX GX100BJ と PIONEER S-PM50 は雰囲気重視、その他は原音忠実というおおざっぱな傾向がききとれました。雰囲気重視か原音忠実かは目指す方向がちがい、どちらがすぐれているかではなくて好みの問題です。
FOSTEX GX100BJ は、先月発売されたばかりのあたらしいスピーカーです。小型スピーカーなのにおどろくほど低音がよくでます。これでしたらトールボーイ型は必要ないでしょう。音質はやわらかく、音色はあかるく、音楽をたのしめるスピーカーです。比較的長時間ならしつづけるような環境でとくに能力を発揮するでしょう。価格も比較的てごろで入門機としてもおすすめできます。FOSTEX のスピーカーは近年進歩がいちじるしいです。
PIONEER S-PM50は、 木の筐体の響きを存分にいかしたつややかな音質、あかるい音色が特徴、カラーリングがかなりきいているので好みのわかれるスピーカーだとおもいます。比較的 癖のすくない FOSTEX GX100BJ が一般的にはすすめられますが、PIONEER S-PM50 の音質・音色がいいと感じる人もいるでしょう。
KRIPTON KX-5P になるとがらりと傾向がかわり、かたくひきしまった精緻な音質、原音忠実、高解像、クリプトンが「ミュージック・モニター」とうたうだけあって、いかにも高音質・高性能といったスピーカーです。FOSTEX GX100BJ とはもとめているものがあきらかにちがいます。BGM 的にきくのではなく、音楽にむきあってしっかりきくというタイプです。完璧にチューニングされたきびきびした透明感のある KRIPTON の音質にここちよさを感じる人が多いとおもいます。楽器の演奏をするような人にはとくにむいています。
TAD-ME1 は、今回の試聴スピーカーのなかでもっともおすすめできるスピーカーです。原音忠実にはちがいありませんが、家庭用に開発されていますので、ゆたかな響きやあたたかい音色がくわわっています。音像定位、音場のひろがりもみごとです。TAD のこのすぐ上のモデルに TAD-CE1 があり、 CE1 の方が ME1 よりモニター調です。家庭で音楽をきくのでしたら ME1 をおすすめします。
YAMAHA NS-5000 は大型のブックシェルフ型スピーカーであり、ブックシェルフ型とフロアー型のいいとこどりをしたようなスピーカーです。ゆたかな響き、音場のひろがりはみごとです。響きを重視しているのは、ヤマハが楽器メーカーでもあることと関係しているかもしれません。ただし音像定位は、小型スピーカーよりも若干おとります。原音忠実ですが雰囲気もなかなかよく、原音忠実と雰囲気重視の中間的なスピーカーといった方がいいかもしれません。
最後の B&W 802D3 は誰もが知る高級スピーカーであり、 B&W といえば、スピーカーの定番のような存在になってきています。原音忠実ですが比較試聴をしてみると、意外にも、B&W 独特のサウンドがあることに気がつきます。筐体がかなり響いているのです。バランス重視、構築性重視、かたくひきしまった低音、前面におしだしてくる男性的なサウンド。音質は硬質、重厚です。大交響曲をほぼ完璧に再現します。ピアノ協奏曲では、ライブ以上にくっきりはっきり重厚にきこえてきます。一方でかろやかなフランス音楽、ウィーンのやわらかい弦楽合奏などにはむかないかもしれません。
*
スピーカーには大きくわけて、雰囲気重視のものと原音忠実のものがあります。
雰囲気重視のスピーカーでは独特の色づけや響きがくわわります。製造コストの条件により、低価格帯の製品は高級ユニットをつかえないので、音質が落ちる分を色づけや響きでカバーしているという傾向があります。しかし高級スピーカーであっても、製造者が思想をもってカラーリングをしているスピーカーも多数あります。タンノイサウンド、フォーカルサウンド、ダリサウンドなど。これらの高級スピーカーで音楽をきくと、本物(実際の演奏)以上にうつくしく心地よくきこえることがよくあります。
一方の原音忠実スピーカーは、 B&W が「過ぎたるは及ばざるがごとし」といっているように、よけいなことはしないという思想にもとづいています。しかし原音忠実といっても家庭用に開発されているため、純粋なモニタースピーカー(録音をチェックするためのスピーカー)ではありません。各社工夫しています。どのような工夫をしているかは各社それぞれです。原音忠実といっても程度の差があります。
したがってスピーカーの選択では、実際に試聴してみて、自分のすきなサウンドがだせるスピーカーをさがしださなければなりません。よくきくジャンルにもよります。ロックかポップスかクラシックかでちがいます。あるいは何をもとめるか? いやし、娯楽、音楽追究、名演の再現、録音状態のチェック・・・
オーディオの音質や音色は、その6〜7割をスピーカーが決めます。したがってスピーカーをまず決めて、それからそのスピーカーにあったアンプやプレーヤーを選択するという順序がよいでしょう。
今回のイベントは、おなじ条件で一気に比較試聴できるおもしろい企画でした。こうしたイベントは今後とも開催してほしいです。
▼ 注1
OTOTEN – Audio・Visual Festival 2017
イベント・セミナー
▼ 注1
OTOTEN – Audio・Visual Festival 2017
イベント・セミナー