ステレオ再生で音楽を聴くときには、共鳴や音像定位に注意してみるとよいでしょう。

青木直史著『ゼロからはじめる音響学』(講談社)は音響学の入門書です。音とは何か、聞くとはどういうことかについて理解することができます。



■ 共鳴とは

コップのように、一方が開き、もう一方が閉じだ閉管の中で音を鳴らすと、じつは、菅の外に出ようとする音の一部が菅の口で反射し、その音がさらに菅の底で反射するという多重反射を繰り返すことになります。(中略)

進行波後退波は、閉管のなかでお互いに干渉し合うことになりますが、特定の周波数のときに波形の位相が一致し、音が大きくなります。このように、波の反射と干渉によって特定の周波数の音が強調される現象を共鳴と呼びます。また、共鳴によって強調される周波数を共鳴周波数と呼びます。


楽器でもスピーカーでもこの共鳴をコントロールすることがとても大きな課題になっています。そのために、数多くの職人や技術者たちが筐体づくりの試行錯誤をくりかえしてきたのです。

進行波と後退波をかさねあわせると、波がどちらの方向にもすすまず、その場で振動をくりかえす定常波が生じることが共鳴の特徴です。どのような共鳴を生みだせばよいか、そのコンセプトと技術が問われます。ただし最近ではコンピューターをつかって計算するケースもでてきました。

わたしたちリスナーも共鳴に注意してみるとよいでしょう。



■ 両耳で聴くとは

人間には左右ふたつの耳がありますが、じつは、両方の耳で音を聞くことは、片方の耳だけで音を聞くのとは異なる効果をもたらします。こうした人間の聴覚のしくみを両耳聴効果(りょうじちょうこうか)と呼びます。

人間の聴覚には、どこで音が鳴っているか、音源の位置を割り出す能力が備わっています。こうした音源定位のしくもも、両耳聴効果の一例といえるでしょう。


音源の相対的な位置が左右どちらかにずれているとそれぞれの耳に到達する音に時間差が生じます。また頭が、片方の音をさえぎるような位置関係になると、左右の耳に到達する音に強度差が生じます。人間の聴覚は、こうした時間差と強度差を検出して音源定位をおこなっています。

オーディオの一般的なステレオ再生では、スピーカーをおいていない場所からも音が聞こえてきます。このように知覚させるのがステレオ再生の最大の特徴です。

スピーカーをおいていないところ(2本のスピーカーの間)から聞こえてくる音は本物の音源ではありません。本物の音源と区別するためにそれを音像とよびます。また音像を知覚することを音像定位といいます。

音源は物理的な存在ですが、音像は心理的な存在であり、音像定位は一種のイリュージョンあるいは仮想現実であるといってよいでしょう。性能のよいオーディオシステムで聞くと、大編成の交響楽団がかなでるような音楽でもみごとな音像定位が実現します。

このような音像定位は仮想現実である以上、オーディオ装置だけで実現できるのではなく、人間の聴覚の仕組みによって生じるということに気がつくことが重要です。したがっていい音楽が聞けるかどうかということは、聞く人の能力にも大きく依存してくるのです。いい装置をそろえればそれですむということではなくて、聞く練習も実際には大事だということです。

聴覚の実際の仕組みは、耳で受けた音波が、信号に変換されて神経をとおって脳につたわり、そこで情報が処理されて音楽が知覚されるというものです。


▼ 文献
青木直史著『ゼロからはじめる音響学』講談社、2014年3月27日